こんにちは!テンパです。
薬とグレープフルーツジュースの相互作用について、薬剤師として常識かと思います。
しかし、この記事ではあえて薬剤師なら必ず知っている、薬とグレープフルーツジュースの相互作用について、薬剤師向けに説明したいと思います。
いやいや、今さら薬とグレープフルーツジュースの飲み合わせなんて・・・
と思うかもしれません!
でも、知っていましたか?
グレープフルーツジュースの飲み合わせの悪い薬の中には、血中濃度が上昇し作用が増強する以外にも、作用が減弱するものもあります。
そこで、薬とグレープフルーツジュースの相互作用で、具体的にどの薬がどの作用機序で、作用が増強・減弱するのかについて、詳しく説明していきます。
周囲の人たちにはあまり知られていませんが、薬剤師って常に勉強、勉強・・・で結構、大変ですよね。
新薬の発売、薬事法の変更など、次々と新しい情報を覚えていかなければなりません。
だからといって、古い情報も忘れずに、しっかりと頭の中で整理していかなければなりません。
この機会に、薬とグレープフルーツジュースの相互作用について整理してみて下さい。
もし・・・薬とグレープフルーツジュースの飲み合わせについて、忘れてしまった方はまず、こちらをどうぞ!
その前に
グレープフルーツジュース(GF-j)のおさらい
薬とGF-jの相互作用は、GF-j中のフラノクマリン誘導体である bergamottin,dihydrobergamottin が消化管粘膜中のCYP3A4を不可逆的かつ強力に阻害することにより、本来は吸収過程で代謝される薬が代謝されず吸収され、バイオアベイラビリティが増加することで引き起こされます。
また、GF-jの相互作用はP-糖蛋白質の阻害効果にも関係するといわれています(否定的な意見もあります)。
● 経口投与の薬物のみに影響する
● コップ1杯のGF-jで十分に作用を発現する(2倍濃縮ジュースを同量飲用しても作用は増強されない)
● GF-jの連続摂取は小腸・肝臓のCYP3A4含量を増加させる可能性がある
● 大量のGF-j飲用は肝臓でのCYP3A4阻害の可能性否定できない
● GF-j中の成分は産地・銘柄等によって異なり、相互作用の再現性に影響がある
● 小腸のCYP3A4含有量は個人差があるため、GF-jとの相互作用にも差がある
薬別の作用機序
ここからは、GF-jと相互作用がある薬別に詳しく表にまとめていきます。
対象薬物名 | 相互作用 | 作用機序・併用上の注意 |
〈催眠鎮静抗不安薬〉 ジアゼパム トリアゾラム |
血中濃度上昇-副作用発現 | フラノクマリン誘導体により小腸上皮細胞に存在するCYP3A4が阻害され、血中薬物濃度が上昇する。 |
〈精神神経用薬〉 カルバマゼピン ピモジド |
血中濃度上昇-十得な副作用(QT延長、心室性不整脈等) | GF-jがCYP3A4による薬物代謝を阻害し、本剤の血中濃度上昇。 |
〈不整脈用薬〉 アミオダロン塩酸塩 |
副作用発現 | フラノクマリン誘導体により小腸上皮細胞に存在するCYP3A4が阻害され、血中濃度が上昇する。 |
〈脂質異常症薬〉 シンバスタチン アトルバスタチンカルシウム水和物 |
血中濃度上昇-横紋筋融解症の誘因 | 大量のGF-j(1.14L以上)摂取で、本剤・本剤代謝物の血清中濃度上昇。 |
〈血管収縮薬〉 エレトリプタン臭化水素酸塩 |
作用増強 | 主としてCYP3A4により代謝され、代謝酵素阻害によりクリアランス減少。 |
〈Ca拮抗薬〉 エホニジピン塩酸塩 ニカルジピン塩酸塩 バルニジピン塩酸塩 ベニジピン塩酸塩 ニトレンジピン ニフェジピン オルメサルタンメドキソミル・アゼルニジピン カンデサルタンシレキセチル・アムロジピン テルミサルタン・アムロジピンベシル酸塩 バルサルタンアムロジピンベシル酸塩 |
血中濃度上昇-作用増強 | GF-jの成分がチトクロームP-450酵素系CYP3A4による薬物代謝を阻害する。 |
ニソルジピン | 血中濃度上昇-作用増強 | GF-jの含有成分が、本剤の代謝酵素(CYP3A4)を阻害し、初回通過効果減弱。GF-j常飲の場合引用中止4日目から投与。 |
アゼルニジピン アムロジピンベシル酸塩 イルベサルタン・アムロジピンベシル酸塩 シルニジピン フェロジピン ベラパミル塩酸塩 マニジピン塩酸塩 |
血中濃度上昇-副作用発現-頭痛、起立性低血圧 | GF-jの成分が本剤の小腸でのCYP3A4による薬物代謝を阻害。 |
〈Ca拮抗薬〉 アラニジピン ジルチアゼム塩酸塩 ニルバジピン |
他のカルシウム拮抗薬で血中濃度上昇の報告 | 主にCYP3A4で代謝。但し、本剤に関する症例報告はない。 |
〈他の循環器官用薬〉 トルバプタン ボセンタン水和物 |
血中濃度上昇-副作用発現頻度・重症度増加 | 本剤の代謝は主にCYP3A4が関与しているため、本剤の代謝が阻害され血中濃度増加。 |
〈プロトンポンプ阻害薬〉 オメプラゾール |
副作用発現 | GF-j中のフラノクマリン類に小腸上皮細胞常在性のCYP3A4が阻害され、血中スルホン体代謝物濃度のみが減少。 |
〈副腎皮質ホルモン〉 プレドニゾロン |
副作用発現 | フラノクマリン誘導体により小腸上皮細胞に存在するCYP3A4が阻害され、血中薬物濃度が上昇する。 |
〈卵胞・黄体ホルモン〉 エストラジオール エチニルエストラジオール |
副作用発現(血栓症等) | |
〈免疫抑制剤〉 シクロスポリン タクロリムス水和物 |
血中濃度上昇-腎障害の副作用 | CYP3A4は、肝臓以外で小腸にも発現(総量少)する。GF-jは、消化管に選択的に作用し、小腸上皮のCYP3A4含量を低下させる。 |
〈抗血栓薬〉 シロスタゾール |
血中濃度上昇 | |
〈肺動脈性肺高血圧症治療薬〉 シルデナフィルクエン酸塩 |
副作用発現(勃起延長等) | フラノクマリン誘導体により小腸上皮細胞に存在するCYP3A4が阻害され、血中薬物濃度が上昇する。 |
〈ヤヌスキナーゼ阻害薬〉 トファシチニブクエン酸 |
本剤の曝露量が増加 | CYP3A4による本剤の代謝を阻害、本剤の血中濃度上昇。 |
〈抗癌剤〉 アキシチニブ イマチニブメシル酸塩 イリノテカン塩酸塩水和物 エベロリムス ゲフィチニブ タミバロテン テムシロリムス パゾパニブ塩酸塩 |
血中濃度上昇-副作用発現頻度・重症度増加 | 本剤の代謝は主にCYP3A4が関与しているため、本剤の代謝が阻害され血中濃度増加。 |
〈抗癌剤〉 エトポシド |
効果(抗腫瘍作用)減弱 | GF-jの同時摂取により静脈内投与後のエトポシドのバイオアベイラビリティが非摂取群との比較で薬21%低下。 |
〈アレルギー用薬〉 フェキソフェナジン塩酸塩 |
作用減弱 | GF-j中の成分により小腸上皮細胞に存在する有機アニオントランスポーターが阻害され、本剤の血中濃度が低下。 |
〈抗菌薬〉 エリスロマイシン |
副作用発現 | フラノクマリン誘導体により小腸上皮細胞に存在するCYP3A4が阻害され、血中薬物濃度が上昇する。 |
〈抗HIV薬〉 サキナビルメシル塩酸塩 |
本剤のAUCが増加 | 1倍又は2倍濃縮GF-jで単回投与した場合に、本剤のAUCがそれぞれ50%又は100%増加の報告。 本剤の薬物代謝酵素(CYP3A4)を阻害するため、本剤の血中濃度が増加の報告[添付文書、2002.5.] |
リトナビル | 副作用発現-血中濃度上昇 | |
〈寄生虫用薬〉 メフロキン塩酸塩 |
血中濃度変動 | 本剤は肝CYP3A4により代謝されることが示唆されている。 |
アセブトロール塩酸塩 アテノロール シプロフロキサシン セリプロロール塩酸塩 フェキソフェナジン塩酸塩 レボチロキシンナトリウム レボフロキサシン水和物 |
血漿中濃度低下 | in vitroで有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)1A2が介在する取り込み輸送を阻害し、本剤のバイオアベイラビリティを著しく減少させる。ジュース中のnaringinが相互作用の主な原因物質であり、腸のOATP1A2を直接阻害することで経口バイオアベイラビリティを減少させる。 |
〈癌疼痛治療薬〉 フェンタニルクエン酸塩 |
本剤の血中濃度上昇 | GF-j中に含まれる成分によりCYP3A4による消化管内での代謝阻害。 |