こんにちは!薬剤師テンパです。
薬局で働いていると、患者さんから薬についていろいろな質問を受けます。その中でも多いのが「薬を飲み込みにくい」「薬を(子どもが)飲んでくれない」といった、薬の飲み込みに関するものです。
その原因として、薬の大きさ・剤形(粉薬、シロップなど)・味が挙げられます。
子どもの場合
- 粉薬が苦手
- 抗生剤がにがくて飲めない
大人の場合
- 錠剤が大きくて飲み込めない
- カプセルがのどに引っかかる
- 漢方の味が苦手
しかし、「飲みにくい」「飲んでくれない」からといって、薬を自己判断で砕いたり、食べ物や飲み物に混ぜて飲んでしまうと、せっかくの効果が弱まってしまったり、副作用が発現しやすくなってしまう可能性があります。
このような判断は薬剤師ではないと難しいことが多く、中には安定性に関するデータが少なく薬剤師でも判断しかねる薬もあります。
そんな時に、テンパが患者さんに勧めているのが服薬補助ゼリーです。CMでもよく見かけますよね。
そこで今回は、服薬補助ゼリーの特徴と選び方、おすすめ服薬補助ゼリーについて解説します。
目次
薬はしっかり胃に到着することが前提
薬で重要なことは、まずは決められた量を決められた時間にしっかり飲み、飲み込んだ薬が確実に胃に到着することです。
ここまできてやっと薬による治療が始まります。
しかし、薬を服用すること自体を苦痛に感じてしまうと、飲み忘れが起きてしまいやすく、結果として1日の服用回数・服用量が減ってしまい、薬による治療が中断されてしまいます。
特に乳幼児は服薬の機会が多い一方、薬のにがみを嫌がる傾向にあります。
例えば、抗生剤の粉薬は一般的ににがいものが多く、クラリスロマイシンやアジスロマイシンなどマクロライド系抗菌薬は、オレンジジュースやスポーツドリンクなどの酸性飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルトなどの酸性飲料や食品に混ぜるとにがみが強くなったり、薬の効果が悪くなったりします。
このような場合に、粉薬だけではなく錠剤を含めて、服薬専門の服薬補助ゼリーを使うことで、薬が喉に引っかかったり、苦みなどの味を感じることなく、確実に薬を胃に届けることができます。
また、少量のゼリーで服用できるため、水分摂取制限のある方でも使うことができます。
服薬補助ゼリーの特徴と選び方
服薬補助ゼリーの特徴はこの3点があげられます。
- 薬の作用や吸収に影響しない
- 喉に引っかからずに飲み込める
- にがみなどの味をマスキングしてくれる
服薬補助ゼリーはいろいろなメーカーから発売されていて、どれも薬の作用に影響が少ないように作られていますが、成分内容に少し違いがあります。
そこで服薬補助ゼリーを買う前に、薬剤師として注目したいポイントを説明します。
服薬用(くすり用)と表記されている
服薬補助用に作られたゼリーとそうではないゼリーがあるので、薬と一緒に服用できる旨が表記されていることを確認しましょう。
それに加えて、崩壊試験・溶出試験・配合変化試験などの実施している商品だと、薬の作用に影響がないことが証明されているのでより安心です。試験データについては、各メーカーのホームページで公開されていることが多いです。
保存料が使われていない
保存料が薬の作用に影響する可能性があるので、できる限り保存料が使用されていないものを選びましょう。
糖分やカロリーについて
糖尿病などの持病で糖分制限やカロリー制限がある方は「ノンシュガー」「低カロリー」と表記されているものを選びましょう。
カフェインが入っていない
乳幼児の場合、カフェインの摂取に注意が必要です。乳幼児に使用する場合は「こども用」の服薬補助ゼリーを選ぶとカフェインが含まれていないので安心です。
これらを確認したら、服薬補助ゼリーの味(フレーバー)とタイプを選びます。
味(フレーバー)を選ぶ
味(フレーバー)はりんご・ぶどう・いちごなどのフルーツ味が多く、それ以外にもチョコレート味、コーヒー味など様々なものが用意されています。
好きな味(フレーバー)を選びましょう。
服用する薬の剤形から「タイプ」を選ぶ
タイプは2種類で、錠剤(カプセル)を包み込むタイプ、粉薬を混ぜるタイプがあります。選び方は服用する薬が粉薬かどうかになります。
錠剤(カプセル)を包み込むタイプは、錠剤(カプセル)をゼリーで包んで服薬します。錠剤(カプセル)以外にも粉薬にも使用できますが、粉薬の量が多いとゼリーで包み込むのが大変です。そのような場合は、粉薬とゼリーを混ぜて服薬する粉薬を混ぜるタイプがおすすめです。
抗生剤・漢方薬にはチョコレート味・コーヒー味がおすすめ
飲んだことがある方はわかると思いますが、抗生剤の粉薬や漢方薬って本当に飲みにくいです。
薬剤師という仕事柄、薬の説明する上で味についてきかれることがあるので、薬がどんな味なのかを知るために、少量を味見することがあります。
抗生剤はドライシロップで甘い味がついていることが多いですが、残り味がどれもにがいものが多く、特にマクロライド系抗生剤のにがさは格別です!
また、漢方薬の味はくせが強い上に1回に飲む量が多いので、苦手な人にとっては大変です。
このようににがみやくせのある味には、味をマスキングしてくれるチョコレート味やコーヒー味の服薬補助ゼリーがおすすめです。
フルーツ味だと舌の上にのった時に、薬のにがみを引き立たせてしまう可能性があります。
薬の作用への影響は実際どうなのか
龍角散が販売している「らくらく服薬ゼリーシリーズ」、「おくすり飲めたねシリーズ」は、服薬補助ゼリーの崩壊試験・溶出試験や、製薬会社の東和薬品と共同で医薬品との配合変化試験を実施しており、薬と一緒に服用しても問題ないことをホームページ上で公表しています。
他のメーカーの服薬補助ゼリーも、特に薬に影響を与えるような成分が入っていませんが、試験等は実施していないようです。
普通(手作り・市販)のゼリーではだめ?薬剤師的な判断
腰を痛めてしまい痛み止めを飲んだり、子どもが風邪をひいて市販の風邪薬を飲んだりなど、定期薬を服用していない人にとって、薬を飲む機会は急な場面が多いかと思います。
そんな時にわざわざ服薬補助ゼリーを買いに行かなくても、服薬用ではない手作りや市販のゼリーで代用できないかと、考えたことはないでしょうか?
薬剤師的な判断としては、服薬用ではないゼリーで薬を服用しても問題ないと考えています。
その理由は、ゼリーはカプセル剤の基剤と同じゼラチンでできており、ゼラチン自体は消化管で消化されやすく、薬に影響する作用はないからです。
しかし、薬の吸収に影響がないことを検証する試験を実施していないことや、糖分の多いゼリーと共にアセトアミノフェン等の薬を服用した場合、吸収速度が減少したという報告もあることを考慮すると、急速な効果を望むときは避けた方が無難です。
ですが個人的にはそこまで神経質にならなくても良いと考えています。
もちろん緊急じゃない場合に限りますが、薬はまず飲むことが大切なので、どうしても薬を飲み込めない場合には試しても問題ないと思います。
それでも気になる方は、薬の作用に影響がないことが試験された服薬補助ゼリーを使用しましょう。
服用補助ゼリーの正しい使い方
各メーカーのホームページで服薬補助ゼリーの使い方が紹介されています。
「錠剤(カプセル)を包み込むタイプ」「粉薬を混ぜるタイプ」の2種類がありますが、ポイントはどちらも同じで「口に入れたら噛まずにすぐに飲み込む」ことです。
画像出典:株式会社龍角散/らくらく服薬ゼリー
開封してから保存期限はどれくらい?保存方法は?
保存期限
開封後1週間程度。
保存方法
開栓後はキャップや栓口を清潔にして密封し、冷蔵庫に保存します。
1度開封したものは、冷蔵庫で保存していても細菌が増殖してしまうので、出来るかぎり早めに使い切りましょう。毎日薬を服用しない場合は、1回分ごとで個包装になっているものがおすすめです。
患者さんから評価が高かったおすすめ商品
実際に服薬介助ゼリーを使用している患者さんから評価が高かった商品を紹介します。
「らくらく服薬ゼリー」シリーズ(龍角散)
製薬メーカー「龍角散」が販売している、合成着色料・保存料不使用の服薬補助ゼリーです。最大の特徴は「特許取得」商品ということと、薬の作用に影響がないことが試験等で証明されていることです。
味はレモン味、いちごチョコ風味、コーヒーゼリー風味があります。漢方薬や粉薬には、いちごチョコ風味、コーヒーゼリー風味がおすすめです。ノンシュガーなので、糖尿病の方も心配なく使用できます。外出時には1回分ずつ包装が分かれているスティックタイプが便利です。
「おくすり飲めたね」シリーズ(龍角散)
CMでもおなじみの服薬補助ゼリーです。薬が苦手な子ども用というイメージがあるかもしれませんが、もちろん大人でも使用できます。
味はぶどう味、いちご味、チョコレート味と種類が豊富で、にがみの強い抗生剤の粉薬にはチョコレート味が最適です。こちらも「龍角散」から販売されていて、薬の作用に影響がないことが試験されているので安心です。
「お薬じょうず服用ゼリー」シリーズ(アサヒグループ食品)
着色料・保存料不使用で、ゼリータイプ(りんご風味)と顆粒タイプ(いちご風味)があります。顆粒タイプ(いちご風味)は粉薬専用で、水を加えてゼリー状にした後で、粉薬と混ぜて服用します。他の商品と比べてとろみがあるので、におい、にがみ、ざらつき感をやわらげてくれます。